【行政書士が徹底解説 #003】電子契約において印紙税がかからない理由とは

電子契約では紙の契約書と異なり、「印紙税」が非課税となることからコスト削減に繋がるというメリットがあります。

とはいえ、「どうして契約自体は同じなのに印紙税がかからないの?」と疑問を抱く方も多いはず。

そこで今回は、電子契約において印紙税がかからない理由についてまとめてみました。

おさらい:印紙税法における”印紙税の納税義務”について

電子契約を導入することにより、印紙税が非課税となるのはなぜなのか。

その理由について掘り下げる前に、まずは印紙税法についてざっとおさらいしておきましょう。

印紙税の納税義務については印紙税法第2条および3条に定められています。

第二条 別表第一の課税物件に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

別表第一には”請負に関する契約書”や、”売上代金に係る金銭または有価証券の受取書(領収証など)”をはじめとした20項目の書類が規定されています。

電子契約で印紙税が不要なわけ

印紙税法第二条において、「電子契約においては非課税となる」といった明確な文言は見当たりません。

しかし印紙税第二条では、課税対象として書面の文章だけを掲げていることから、電子文章は含まれないと解釈する考え方が一般的です。

とはいえ、そのような解釈の仕方では不安が拭えない方もいますよね。

そこで公的な場で言及された見解についても見ておきましょう。

国税庁HPにおける見解

国税庁のホームページでは以下のように言及されています。

印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされている。本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

引用: 請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/bunshokaito/inshi_sonota/081024/02.htm)

つまり、”電磁的記録によって契約を締結した場合には、課税文書の作成とはいえず、印紙税の課税対象とはならない”ということになりますね。

小泉政権時における国会答弁

2005年、当時の小泉内閣における国会において参議院議員の質問に対し、以下のような答弁を行っています。

上記の答弁5の一部を抜粋してみました。

事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。

引用: 参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書/小泉純一郎首相(https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/162/touh/t162009.htm )

以上のように、政府の見解としても電子契約において印紙税は不要とされています。

まとめ

今回は電子契約において印紙税がかからない理由と根拠について、お伝えしました。

なお、電子署名法自体は2001年4月1日に施行されたもので、電子契約が10年以上も運用されていることになります。

印紙税不要の恩恵は大きく、例えば会社設立の実務においても電子的に定款を作成すれば印紙税4万円が不要に。

費用の削減といった意味でも、この機会にぜひ電子契約システムの導入を検討してみてくださいね。